地域活性化の政策立案とリーダー育成研究
産業空洞化、少子高齢化、地方自治体の財政危機、政府の地方分権化の推進により、地域活性化や新事業創生、行政再建、PFI事業への具体的取組ニーズが高い。地域活性化事業への政策やP2M手法導入による立案、PFI提案に加えて、地方自治体におけるリーダーなど人材育成のP2M適用や教材報告多様な実績や手法が報告されているので研究テーマへの絞込みも検討してほしい。

「地域活性化研究会」活動が始まる


平成18年3月23日「地域活性化」研究会(リーダー小原重信日本工業大学大学院、正会員10名、参加希望者6名)と「建築ビジネスモデル」研究会(リーダー大成建設田中和夫正会員8名、参加希望者2名)の合同研究会が日本工業大学神保町キャンパスで開催され、それぞれのリーダーが研究活動方針についてプレゼンを行い討議が行われた。合同研究会は、両者の研究テーマの相乗効果を求めて、実施されたものである。






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地域活性化の政策立案とリーダー育成の研究グループ

l        題意識 

産業空洞化、少子高齢化、地方自治体の財政危機は、日本経済再生にとって将来課題を残す複雑な現象である。政府は地方分権化、経済特区で対応し、さらに道州制を検討している。地方行政レベルでは、新事業の創造、PFI事業、企業誘致によって地域活性化に取り組んでいる。地方自治体のリーダー人材にこそ創造的で複雑な問題解決のためにP2Mの発想と技法が重要になる。

l        研究会活動の進め方                                                                   

研究会の方針は、メンバーの多様な関心を尊重して、対象領域を最初から絞らずに、テーマに関連する情報を共有して現状を知り、研究材料を発掘することが望ましいことで一致した。そこで、東京と大阪地区は交流を図りながら、 本年の9月末までに6−8事例の発表会を開催して9月末に中間報告書を作成することで合意した。そのような研究対象の事例は、図1、示すような産業クラスター、知的クラスター 、組織再生、新事業創造、先進活性事業、教育人材事業などが考えられる


l        知的産業クラスターの理論                                                      

クラスターは、米国の経営学者マイケル・ポーターがグローバル競争時代にイノベーション効果を意識して地域活性化戦略である。彼は、伝統的な大都市周辺に集中する産業集積による立地、物流のコスト効果よりも、地域の自立的で独自のイノベーション効果による地域の競争優位を着目した。大都市には人口集中やインフラの立地優位もあるが、中央政府の関与や過密による非効率性を受けやすい環境もある。グローバル競争時代には、地域集積した独自のイノベーションを生み出す競争優位を引き出す戦略こそが重要であると指摘する。例えば、ピッツバーグのような医療やバイオの研究機関が集結し、多額の研究投資が実施されていた。しかし、クラスター戦略以前に地域経済効果は小さかった。クラスター理論では、研究成果のイノベーション効果を事業化価値に結集する仕組みを重視する。マイケル・ポーターは、クラスターcluster-ぶどうの房)というコンセプトを提唱した。より具体的には、事業立ち上げへの挑戦、地域間のネットワーキングによる事業機会の創造、ベンチャー起業家の育成、とくに地域の異種企業間の協働(collaborationという研究シーズを事業ニーズに顕在化し事業成果に結実化させる仕掛けを重視する。

l        日本の産業クラスター形成                                                               

日本の行政でも米国のクラスターによる地域活性化に注目し、「産官学連携」の横型ネットワークが奨励され、全国にクラスターブームが編成され実施されている。グローバルな競争へイノベーションマインドを高めて、アジアで実力をつけた新興国に対して独自技術で模倣のできない製品や部品を創りだす技術品質を生み出す努力が要請される。中小規模の個別企業がローカルマインドで努力するだけでは、資力やブレークスルー効果にも限界がある。そこで地域行政は、研究機関や大学も連携して地域で蓄積した技術を相互利用するためにデータベースを作成したり、より高度な独自製品を全国に発信する着地点を模索している。また地域の連携を促進するために個別企業の結集に加えて、行政機関、商工団体、企業、金融機関、大学、法人が参加した横型ネットワーク組織やコーディネーターが設置されている。

l        P2M地域活性化の視点                                                       

日本は米国の多極的大都市地理とは異なり、狭い国土で東京、大阪の一極集中傾向にある。しかも、明治維新より中央集権型行政で欧米キャッチアップ型で発展した風土も影が濃い。現代日本のイノベーション形態は、自動車や電子産業の大企業が「ものづくり」イノベーションを通じて、中小企業の高品質や開発部品を調達する生産、物流、開発の価値連鎖や人間関係の色濃いサプライチェーンに特色がある。航空宇宙、軍事兵器、ライフサイエンス、バイオ、医療、ITなどに競争優位特化する米国クラスターと日本のクラスターとは産業風土が異なる。クラスター思想は、極めて有意義な仕組みであるが、わが国の地域活性化には、イノベーティブな大企業のリーダーシップに加えて、グローバル競争で世界シェアを獲得し活躍するオンリーワン企業に見られる「コアリーダー」人材と育成こそが鍵になる。P2Mは、このような日本風土のコアリーダーをモデルに開発されたプロジェクト&プログラムマネジメントであり、スキーム、システム、サービスのプロジェクトモデルを有機的に展開するプログラムマネジメントを特色としている。その視点で地域活性化の政策立案や人材育成の研究を推進する。



平成18年3月23日
「地域活性化」研究会と「建築ビジネスモデル」研究会の合同研究会
発表者のみなさん